作品
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青木野枝(あおきのえ) 「塩池」
鉄(耐候性鋼)
H:240 φ:230 H:330 φ:130p
私は火を使って鉄を切る。火口を近づけると鉄は熱を持って赤色になり、それから白色にちかい朱色となって溶けていく。
切られた鉄の断片は太陽が沈んでいくように熱を失っていく。けれども見ていると、輝きを失いつつ鉄は内部まですっと透明に見える時がある。
私にとって鉄は一番ちかくにある物質だ。
何年か前、出雲にたたら製鉄を見に行った。川から取った砂鉄を、土で固めた炉に入れて火で溶かして鉄をとる。
工場に着いた時は日も暮れて、雪の中に鞴の音が大きな動物の呼吸のように響いていた。
そこで見た光景は私に、鉄は人間の近くにあり続けた物質だったのだとわからせた。
入浜式塩田は、白黒写真で見たことがあった。
その風景は本当に私をひきつける。美しいと思う。私にとって、鉄と塩は同じ部分を多く持つ物質だ。
瀬戸田には塩田があったのだという。今はもう無くても、かって塩田があった場所に自分の彫刻を置くのはとても重要な気がする。
そして彫刻は、鉄と塩でできた結晶のようになればいいと思った。
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