作品
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海老塚耕一(えびづかこういち) 「空/海 YURAGI」
鉄
120p×593p×453p
水の音に耳を傾けてみる。次第に水に包まれて行くような、心地よい気持ちになる。
そんな水に捉えられてもうどのくらいの時が経ったのだろう。
水の多彩な表現との係わりは、そしてはじまりは、東野芳明さんが紀州の海へ連れて行ってくれたことからだった。
幾日も海に潜り、遊んでいたある日、急にマレーとかマイブリッジの写真が浮かんできた。
あんな連続写真で「水」を撮ったなら、その水はどのような表情をしているのだろうかと考えた。
それぞれの瞬間のなかで「水」はどのような形をしているのか。「運動の秘密の瞬間」、それをみてみたいと切実に思った。
それは、私の眼差しが何処までものの本質に迫れるのかということと同意気だった。
幾度もダ・ヴィンチの水の素描を眺めたのもこの頃だった。
瀬戸田の海を巡り、ある場所に辿り着いたとき、何か遠い光景や、すでに目に見えないさまざまなものの間を
微かな交通が働いていることに驚いた。
そしてそこでは、海の表面が、揺らぎが、人々の記憶の中に次第に沈殿してしまったその場の過去を、人知れず、静かに蘇らせていた。
「水の音」と「風の音」そして「人の足音」までが入り交じって聴こえてきた。
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