島ごと美術館

〜島の風景と一緒に味わう〜
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作品
@1羽の鳥の為に
A風の中で
B空へ
C凪のとき 赤いかたち/傾
D波の翼  
E地上と地下の間で
Fねそべり石
G球を包む幕舎
H海からの贈り物
Iうつろひ
J飛石
K千里眼
Lベルデールせとだ
M地殻
N塩池
OCATS DANCE
P空/海 YURAGI

作品展示場所
£番外編  
わしもみてきた
 
  山口牧生(やまぐち まきお)       「ねそべり石」

ねそべりいし

能勢黒みかげ石
90cm×270cm×220cm



 ほぼ直方体に近いかたちにととのえられた石をふたつ、下駄の歯状に並べる。

 ひとつが220×90×90cm、約1.7立米、5トンの石である。

 はたしてこの石は大きいのか小さいのか。人間の尺度をもってすれば、それは大きいといえなくもない。しかし人口の 砂浜とはいえ、サンセットビーチの広大な空間の中では、それはゴマつぶのように小さい。作品設置の場所として、わ たしがここを選んだということは、この石の大きさの主張ではなく、逆にその小ささの検証であり、碓認なのである。

 もとより人間もまた小さな存在である。小さいばかりでなくたちまちにしてうつろいゆく存在である。しかしその小さ なたよりない人間が、大自然や宇宙と感応するのであり、荘厳な日没の光景をかたずをのんで見守って、しばしをそこ に立ちつくすのである。そのことをわたしはつくづく不思議なことに思う。

 輝かしい夏の一日人々はこの浜で水とたわむれる。海上遊泳に疲れて子供たちは、この〈ねそべり石〉によこたわり甲 羅を干し、あるいはあおむけにねてまどろむかもしれない。そのとき、子供たちはさきほどまでの水中にただよった感 覚と対比して、この石の不動のかたさ、たしかさを感じてくれるだろう。もしかしたら、人間のよって立つところの大 地のたしかさを、その背中や腹に感じてくれるかも知れない。

 やがて夏が終り、この浜辺がひっそりとして人影もまばらになる季節、やはり西の海のかなたに太陽はますます荘厳に 輝いて沈んでゆくだろう。黄金にふちどられた雲はたなびき、海が金波銀波に燃えるとき、このねそべり石のよく磨か れたゆるやかな凹凸をもつ上面もまた、夕日を反映してもうひとつの金波銀波に輝くだろう。

 そしてこの平行にならんだふたつの黒い石は、周辺の白砂からきわ立って、空飛ぶ鳥たちの目に、小さいけれど鮮明な マークとしてうつるだろう。渡り鳥たちは、隊列をととのえ、その航路をわずかに修正して、はるかな旅へと向かうだ ろう。



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